バレンシアガ　カードケース コインケース/小銭入れ 【日本産】

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　訳本がこのところ立て続けに話題になっている。

　フランス文学者にして翻訳家の堀茂樹さん（70）。

　4年がかりで訳出した歴史家・人類学者エマニュエル・トッドの「我々はどこから来て、今どこにいるのか？」を10月末に上梓（じょうし）。多様な家族システムの分析から人類史を総覧した大著は「『進化論』や『資本論』にも比すべき傑作」とも評され、上下巻で計700ページの学術書ながら1カ月で4万部の売れ行きだ。また、1993年に3作品を矢継ぎ早に翻訳して以来の「推し」作家アニー・エルノーが今年のノーベル文学賞を受賞し、増刷が相次ぐ。

　どちらも、日本人が一般的にイメージする「フランス文学」「フランス思想」の書き手とは言いがたい。むしろパリの文壇・論壇からは遠い「周縁部」の作家・知識人と見なせるかもしれない。「家族」を切り口に歴史と社会を捉えるトッドの方法論は本国では「保守反動的」「決定論的」と異端視されることも多く、エルノーは貧しい庶民階層出身だ。

　気だるげなロマンス、美食とファッション、記号的意匠やレトリックに戯れワイングラス片手に哲学談議――そんなステレオタイプからかけ離れた彼（か）の国の現実、本人いわく「もう一つのフランス」を紹介し続けてきた。

　慶応義塾大名誉教授、アンスティチュ・フランセ東京（旧東京日仏学院）講師の肩書を持ち、いまや数多くの翻訳家やフランス畑の専門家を育てた実績を有するが、若き日はパリで放浪生活を送り、帰国後も定職のない、一介のフリー研究者だった。「当初は翻訳を見下していた」とも言う。そんな堀さんが目利きのブックハンターとして翻訳を天職と自任するに至るには、ある作品との強烈な出会いがあった。

　あちらからこちらへの「文化の渡し船」でもある翻訳のメチエ（熟練の業）はどのようなものなのだろうか。私たちにとって外国語とは何物なのか。「もう一つのフランス」とは？　じっくり聞き込んだ。

アニー・エルノーが果たした二重の雪辱

　堀さんが初めて邦訳し日本に紹介して以来、計6作品を手がけたエルノーは、自らの体験を色濃く反映した自伝的作品を多数発表してきた作家だ。一昨年には、妻帯者の若い男との肉体的な性愛体験をつづった「シンプルな情熱」が映画化され、今月2日からは「事件」を原作にした「あのこと」（昨年のベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞）も公開されており、あらためて注目を集めている。「事件」も、中絶が違法だった60年代のフランスで予期せぬ妊娠をした学生時代のエルノー自身がモデルだ。

　「エルノー作品は、『赤裸々な告白』といった決まり文句で通俗的に紹介されることも多いですが、まったく的外れです。エルノーの文体は自己陶酔とは対極の徹底的に禁欲的・抑制的なものです。一人称単数の「私」が冷静に語ることによって経験化していく体験は少しも特異ではなく、読者に対して普遍的に開かれています。日本の私小説とはそこが違う」

　「『事件』は、60年代に『…