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　新型コロナウイルス感染予防のための行動制限が緩和され、太平洋戦争末期の沖縄戦の悲惨さと平和の尊さを伝える「ひめゆり平和祈念資料館」（沖縄県糸満市）に修学旅行生たちが戻ってきました。沖縄戦の海外での認知度は広島や長崎の原爆被害に比べて低いようです。今回は多くの少女らが犠牲になったひめゆり学徒隊の悲劇を海外に発信する取り組みを紹介します。【那覇支局・比嘉洋】

　沖縄の人を意味する「ウチナーンチュ」。沖縄県から国内外に移住した人や子孫が一斉に里帰りする「第7回世界のウチナーンチュ大会」（10月31日～11月3日）に合わせ、ハワイ在住のウチナーンチュ4人が、ひめゆり平和祈念資料館を見学した。いずれもひめゆり学徒隊にゆかりがあり、うち2人はハワイ日系2世のハリー・儀間（ぎま）真一さん（1917～86年）の親族だった。

　資料館を訪れると、敷地に入ってすぐ右手に儀間さんの功績をたたえる顕彰碑がある。ただ、大抵の人は奥のひめゆりの塔や資料館をまっすぐ目指すので気付かないかもしれない。

　沖縄戦から6年後。51年当時のひめゆりの塔は周囲に出店が並び、献花を参拝客に押し売りする、すさんだ雰囲気が漂っていた。米軍基地で働くエンジニアとして、米国統治下の沖縄に来ていた儀間さんは、そんな様子に心を痛め、同僚らから集めた資金で周囲約2000坪の敷地を購入し、生き残ったひめゆり学徒隊の同窓会に寄付した。参道には自ら小石を敷き詰めたという。今日、私たちが静謐（せいひつ）な環境で学徒や引率教師たちの冥福を祈ることができるのは、儀間さんのおかげだ。海外に渡ったウチナーンチュたちは戦後、荒廃した故郷に仕送りや救援物資を送り、復興を支えた。儀間さんもその一人だった。

　その頃、日本ではひめゆり学徒隊を題材にした小説などがブームになっていた。ブームは海を越え、53年には映画「ひめゆりの塔」がハワイでも上映された。ただ、それから70年近く。ハワイでひめゆりを知る人はすっかり減り、儀間さんの功績も親族の間でさえ忘れ去られようとしていたという。2019年、資料館が沖縄戦を海外に発信するプロジェクトの第1弾としてハワイでの展示会を企画。職員が事前調査で現地入りし、親族らと交流したことで儀間さんの功績が再び脚光を浴びることになった。

　調査に参加した資料館の普天間朝佳（ちょうけい）館長は、ハワイでは戦争が軍人の視点で語られることが多く、住民目線で語られることが少ない印象を受けたという。…